2026/09/02
日本酒のラベルやメニューを見ていると、「生酛(きもと)」や「山廃(やまはい)」という言葉を見かけることがあります。
なんとなく日本酒に詳しい人が飲むお酒というイメージがあるかもしれません。
では、生酛と山廃は何が違うのでしょうか。
この違いを理解するためには、まず日本酒造りに欠かせない「酒母」を知る必要があります。
酒母とは?
日本酒は、米、米麹、水などを使い、酵母の働きによってアルコール発酵させて造られます。
その発酵を安定して進めるため、まず酵母を大量に育てる工程があります。
そこで造られるのが「酒母」です。
文字通り、日本酒を造るための「お酒の母」となる存在です。
酒母では酵母を育てると同時に、雑菌などの増殖を抑えるために乳酸が重要な役割を果たします。
生酛とは?
生酛は、伝統的な酒母造りの方法です。
特徴的なのが「山卸(やまおろし)」と呼ばれる工程。
蒸米、麹、水を櫂と呼ばれる道具などですりつぶしながら混ぜ、酒母を造っていきます。
さらに、蔵の環境などに存在する乳酸菌の働きを利用して乳酸が生成されるのを待ち、酵母が活動しやすい環境を整えていきます。
時間と手間がかかる方法ですが、現在でも生酛造りを続けている酒蔵があります。
山廃とは?
「山廃」という名前だけを見ると、まったく別の製法のように感じるかもしれません。
しかし山廃は、生酛と非常に深い関係があります。
山廃とは「山卸廃止酛」を略した言葉です。
つまり、生酛造りで行われていた山卸の工程を廃止した方法です。
研究によって、必ずしも米をすりつぶす山卸を行わなくても酒母を造れることが分かり、その工程を省略した方法が広まりました。
山廃でも、生酛と同じように乳酸菌の働きを利用しながら乳酸が生成される環境を作っていきます。
生酛と山廃の最大の違い
非常に簡単に整理すると、
生酛
→ 山卸を行う
山廃
→ 山卸を行わない
というのが製法上の大きな違いです。
どちらも自然に乳酸が生成される仕組みを利用する「生酛系酒母」に分類されます。
一方、現在広く使われている「速醸酛」では、醸造用の乳酸を加えることで酒母を造ります。
そのため、生酛や山廃に比べて酒母造りに必要な期間を短縮できます。
生酛・山廃は味が濃い?
「生酛や山廃は濃厚で酸が強い」と説明されることがあります。
確かに、そのような力強い味わいを持つ日本酒もあります。
しかし、生酛だから必ず濃厚、山廃だから必ず酸っぱい、と決まっているわけではありません。
使用する米や酵母、精米歩合、発酵温度、熟成期間などによって、日本酒の味わいは大きく変わります。
生酛・山廃という表示だけで味を完全に判断するのではなく、そのお酒の特徴を知るための一つの情報として見るのがおすすめです。
燗酒との相性も面白い
生酛や山廃で造られた日本酒の中には、温度を上げることで旨みや酸の印象が変化し、燗酒で魅力を発揮するものもあります。
冷酒で飲んだときと、ぬる燗や熱燗で飲んだとき。
同じ日本酒でも温度によって香りや味の感じ方が変わるのが、日本酒の面白いところです。
ラベルを読むと日本酒がもっと面白くなる
日本酒には、純米、吟醸、精米歩合、酒米、酵母、生酛、山廃など、造り方を知るためのさまざまな情報があります。
最初は難しく感じますが、一つずつ意味を知っていくと、ラベルを見るだけでも楽しめるようになります。
生酛は「山卸を行う伝統的な酒母造り」。
山廃は「山卸を廃止した生酛系の酒母造り」。
まずはこの違いだけ覚えておけば十分です。
次に日本酒のメニューで「生酛」や「山廃」という文字を見つけたら、ぜひ飲み比べてみてください。
製法を少し知ってから味わうと、日本酒の一杯が今まで以上に面白く感じられるかもしれません!!